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多事奏論

姫路出身、長岡在住のフルート・篠笛奏者によるblog。フルート・篠笛教室もやってます。お気軽にお問い合わせください。ブログ内の画像はクリックすると拡大版が見られます♪

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「音量」についての誤解

「すわ、金属アレルギーか!?」
と疑うようなことが、この春~夏にありました。
「 引 退 」
の2文字が、ずっと脳内に居座るようになりました。フルートは金属です。私が使っているものはゴールドですが、加工してある以上は他の金属も混じっています。
篠笛一本に絞ってやっていくしかないのか? 
でも私の芯にあるフルートをやめると、篠笛すらどうなるのか?
いろいろと考えましたが……結果、別の種類のアレルギーでした。ああ良かった。
(お騒がせして、周囲の皆さま申し訳ございませんでした……)


そんなアレルギー状態で唇が腫れていても、演奏はやってきます。
公演当日までには根性で治すとして、決まった練習日にも行かないとマズイし、若干腫れが残って皮がガサガサな状態で参加しました。
そこで、とある人に「音が大きすぎる」と言われました。
その日の私、コンディション最悪で、音量が出るわけがないのです。いつもは大ホールでもガンガン鳴らすほどですが、その日は小ホールの中央にまで音が届くかどうか。
いままで言われたことが無いのに、その日に限って何故?

さて、何年か前ですが、こんなこともありました。
アマチュア吹奏楽団の演奏会を聴きに行ったとき。フルートが聴こえなかったのです。
事前情報では、「うちのフルートは音が大きいから、指揮者が抑えて抑えて、って言っている」とのことでした。
しかし、客席後方では聴こえない。

また、とあるレッスン室でのこと。高校生の鳴らすフルートの音が、私の音より大きくなりました。
次の生徒さんが控室で聴いていて、やはりそのように言っていました。
私より鳴らすって、相当です。上達したなって思いました(ちょっと悔しかったけど)。
そのすぐ後に発表会があったので、非常に楽しみでした。練習どおり、よく鳴っていて素晴らしかったです。
ところが、あとで録画を観ると、そうでもない。客席に居た身内は、私の音が段違いにクリアに聴こえてきた、と言っていました。


さあ、どういうことでしょうか?
とある大フルーティストの表現を借りれば、「聴衆は、あなたの肩に乗っては居ない」。

つまり、楽器の音色をザックリと分けると、「近鳴り」「遠鳴り」があるということなのです。
他の要素もあるけど、ややこしいのでザックリね。
解釈もザックリ、こんな感じ。
近くで大きな音がするのが「近鳴り」。
遠くへしっかり届くのが「遠鳴り」。
近鳴りタイプの人の音は、狭い場所では音が大きく聴こえるけれど、大きな会場や野外へ行くと、途端に迫力が無くなったり、音が届いて来なくなって小さな音としてお客様に届いてしまう。
遠鳴りする音は、近くで聴くとソフトだけれど、客席後方に居ても、そばに居るかのようにしっかりと音が届く。

これを知らないと、間違った練習をしてしまいますよね。
大きな音を出したいからとあれこれ工夫をしたら、実は遠くには聴こえない音だった。これ、ガッカリしませんか?

知っておくべきなのは、まず、「遠鳴りする音を近くで聴くとどのような音がするのか?」。
しかも、奏者の身体近くで聴いて知っておくべきです。
デッドな(響かない)部屋で聴かせてもらうと、とても良いです。
自分が目指そうとしていた音とは違うことが分かると思います。
まずはどの方向へ勉強すれば良いのか、知ることがスタートになります。


余談ですが、篠笛の師匠の鯉沼先生が、「笛は遠音が美しい。」とよく仰っています。
お寺などで演奏するとき、演奏のスタートは野外など遠くから吹きつつ会場に入ってくるなど、遠くで鳴っている音をぜひ聴いて欲しいからね、とのことです。
遠くから流れてくるお囃子の音なども、これに当たりますね。

※ 余談ですが、これを考えると、マイクを使うとき、唄口のすぐそばにセッティングされている人がほとんどですが、響きのない生音を拾っていることになります。音は鳴らしたその場、すこし先、ずっと先、で変化していきます。ポピュラー奏者は生の音で良いと思いますが、もしプロのクラシック奏者でマイクが必要な場所に遭遇した時は、ぜひ音が響きを増したところで音を拾っていただきたいと思います。普通の音響さんはそれを知らないので否定してきますが、是非と言っていろんな位置で試させてもらうべきです。


楽器を練習している人は、その場で大きな音が鳴るからと満足せず、遠くへ美しく響く音を目指して欲しいと思います。
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